説明不足

#MeToo運動のバックラッシュはどのようになるか

“Here’s What a Backlash Against #MeToo Might Look Like”

2017/12/14 by Lesley McClurg

翻訳元記事 

ww2.kqed.org

 ハリウッド映画プロデューサー、ハーヴィー・ワインスティーンに対する性暴力告発に引き続いた#MeToo運動で相次ぐ性被害の告白は、アメリカを職場における社会革命へと駆り立てている。

言葉による暴力、不適切な接触や痴漢行為、セクシャルハラスメントの告発によって、必ずしも常に女性たちの望む形ではないにせよ、多くの著名人男性らの謝罪の言葉や反省の顔を得た。告発された男性らが未だに認めていないレイプの告発もいくつかあるが。

胸の痛むような男女の対立する期間ではあったが、Google Newsが「セクシャルハラスメント」について検索したところ200万以上もの、そしてさらに増加しつつある検索結果を得た。またアメリカ国内での対話が概して「現状は許容できないものである」という認識を持って、また冷やかしではなく丁重に交わされている事実をも明らかにしている。

しかしフェミニストや評論家たちは現在の#MeToo運動での語り口の変更は避けられないと警告する。

バックラッシュがやって来るのだ。

Twitterではすでに不満の声が上がってきている。スウェーデンの作家でありテレビタレントのアレクサンダー・バードだ。

調査によれば、スウェーデン人男性の45%は#MeToo運動はやりすぎだと感じている。閉ざされた女同士のネットワークでゴシップを言いたいだけのノイローゼにかかった女性にただ単にお世辞を言っただけで、男性が解雇や懲戒処分、キャリアを台無しにされ続ける限りこの数字は下がらないだろう。

 「嘘 セクシャルハラスメント」、「虚偽のセクシャルハラスメントに関する主張」などで検索すればこのようなツイートは他にも多く見つかる。

ありふれた戦術

はっきりさせておこう、知られているもので「ただ単にお世辞を言っただけで男性が解雇や懲戒処分、キャリアを台無しにされた」事例はまだない。

スタンフォード大法学教授、ミッチェル・ダウーバーはこの藁人形論法を用いた批判を「下劣な」手法であるという。「女性をノイローゼ気味だといったり、セクシャルハラスメントの告白をゴシップと呼ぶのはよくある戦法だ。これは公に告白をしようとしている女性の信用を貶めるための行為だ」とダウーバーは述べる。

沈黙の犠牲者に対する典型的な策略

オレゴン大学教授であり心理学者のジェニファー・フレイドはセクシャルハラスメント被害者の信用を落すために利用される手法について研究している。多くの場合、最初の戦法は否定で始まり、ガスライティングなどを用いた攻撃がそれに続く。

「お前は嘘つきだ。正気を失っていて、信用できない」「なにか裏に動機があるに違いない」

加害者や彼らを擁護する人々が最後に採る手段は、被害者に罪悪感を抱かせることだ。

「お前は俺の評判を傷つけている。俺の人生をめちゃくちゃにしている」

 ダウーバーは加害者が話を歪めるのを幾度となく見てきたと語る。

「これは女性が何十年にも渡って経験してきたことなんです。そして公に名乗り出ることのできる被害者がほんの一部しかいないことの原因でもあります」

虐待方法としてのガスライティングについて学んだ10のこと|Erin|note

アニタ・ヒル事件

フレイドはこれらの手法の広く知られた最も明らかな例は、1991年に行われた最高裁のクラレンス・トーマス判事承認のための議会公聴会だという。トーマス判事の元同僚であったアニタ・ヒルは彼を不適切な性的発言をしたとして告発した。共和党の上院議員らは、トーマス判事の弁護側の証人と同じく、ヒルが男性との関係を空想する傾向があるという可能性を挙げた。

これがトーマス判事のクラスメイトでありヒルについても知る人物が、彼女が報われない恋愛感情をトーマス判事に対して抱いていたと証言する動画だ。(動画は元記事を参照)

トーマス判事は犯行を否認し、上院議員らはそれを立証した。

フレイドはヒルは真実を語っていたと見ている。「この状況で彼女より信頼できる人物を想像するのは難しいでしょう。しかしそれでもなおこの攻撃は効果的なようだ」

 戦術を見越した対策 

 ヒルの恐ろしい体験を目にし、フレイドは「否定(Deny)・攻撃(Attack)・被害者を犯人に仕立て上げる(Reverse Victim to Offender)」の頭文字であるDARVOという新語を造った。被害者たちに加害者の戦術を思い出させ、対策を講じさせるためだ。

「行動パターンを特定し疑問視することができれば、方向感覚を失ったり困惑したりせずにすみます。牙を取り除くことができるのです」と彼女は主張する。

一方で、DARVO戦法を採ったからという理由のみでセクシャルハラスメント容疑者を有罪と決めてかからないよう注意しなければならないと忠告する。

「実際に潔白である人も告発の否定や、告発者を攻撃したり自分こそが被害者であると主張することもあるでしょう。先の研究では有罪または無罪の相関関係としてのDARVO反応の可能性を明らかにすることができるかもしれません」